深層レポート 日本の政治 (195)

「参院選勝利」でも……かくも多難な「憲法改正」への道

2016年8月11日
エリア: アジア

 第3次安倍再改造内閣が8月3日に発足した。これにあわせて、二階俊博幹事長ら自民党役員人事も決定。安倍晋三首相は2018年9月の自民党総裁任期満了、同年12月の衆院議員の任期満了に向けて現政権としての後半戦に向けた陣容を整えた。
 ただ、率直に言って、あまりパッとしない印象の人事である。「巧妙」と評した新聞もあるが、重要閣僚は留任させ、そうでもないポストには入閣待機組を次々と当てはめていっただけ。「お見事!」と拍手を送りたくなるような点は特に見当たらない。

谷垣氏が抜けた穴

 この人事は安倍首相にとっても満足のいくものとは言えない。とりわけ谷垣禎一自民党幹事長が留任を「固辞」したことは誤算だっただろうし、石破茂地方創生担当相が閣内残留を「固辞」したこともある程度予測の範囲内とはいえ、歓迎すべきことではなかったに違いない。巧妙というよりも、2人を欠いたことによる苦し紛れの人事と言ったほうが的確だろう。
 安倍内閣は比較的安定的に支持率を維持しているし、安倍首相を追い落とそうという動きも見られない。しかし、もともと安倍首相の党内基盤はそれほど強いとは言えない。党内のリベラル派閥は当然、安倍首相のタカ派的な言動を警戒している。その上、安倍首相は、自身の出身派閥であり党内最大派閥の清和政策研究会(清和研=細田派)内にも強い基盤があるとは言い難い。
 たとえば、同派に影響力を持ち続けてきた森喜朗元首相とは、自民党総裁選や自民党参院議員会長選などで意見対立が先鋭化し、微妙な関係にある。同じく同派出身の福田康夫元首相とも外交路線をめぐり、関係はあまり良くなかった。
 つまり、安倍首相の自民党内での支持基盤は傍から見るほどには強固とは言えず、いったん落ち目になったら転落は早いかもしれない。そういう危うさが安倍政権にはある。
 そんな中で、温厚で柔和な人柄で党内をうまく取り仕切ってきたのが谷垣氏だった。安倍首相に欠けていた人心掌握術を、谷垣氏が補ってきたと言ってもいい。そんなキーマンの谷垣氏が自転車転倒事故で続投できなくなった。この穴は案外大きい。

カテゴリ: 政治
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