小説・めぐみ園の夏

小説・めぐみ園の夏(12)

高杉良
執筆者:高杉良 2016年9月3日
エリア: 日本
GHQ占領下の当時、世の中は騒然としていたが……(C)時事

 

【前号までのあらすじ】

めぐみ園での生活が続いたまま二宮中学の1年生に進学した亮平は、さっそく野球部に入る。そして学年別のクラス対抗野球試合でも活躍。試合中、あの”小濱浩”から屈辱的仕打ちを受けて気持ちがざわつくが、試合での活躍に対して校長から金一封をもらい、気持ちを和ませる。そんなある日、生涯忘れ得ぬ出来事がーー。

 

 亮平はおしゃべりだった。話の材料は尽きない。得意満面で、池田健二の誕生会から話は始まった。『臭せえ、残飯野郎』も風呂の話も省略し、宿題を教えた見返りだけに止めた。

“奥”のことは一切口にしなかった。ボクシング大会も話したくて口がむずむずしたが、明かす訳にはゆかない。高井さんと園田さんを省かざるを得ないのは切ないが、詮方無かった。

「中学の理科の田口先生が『同じ釜の飯を食う仲は良い』と言いましたが、僕もめぐみ園の生活で体験し、分かったような気がしました」

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執筆者プロフィール
高杉良
高杉良 1939(昭和14)年、東京生まれ。科学専門紙記者、編集長を経て1975年『虚構の城』で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得、綿密な取材によって徹底したリアリティにこだわった問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『濁流』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『虚像』『第四権力』『小説ヤマト運輸』などがある。
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