朴大統領「弾劾列車」の終着駅は?(上)揺れる憲法裁判所、居直る大統領

執筆者:平井久志 2016年12月21日

 韓国国会は12月9日、朴槿恵(パク・クネ)大統領への弾劾訴追案を、予想を上回る234票で可決した。弾劾訴追には全議席(300議席)の3分の2に当たる200票以上が必要だったが全体の78%という圧倒的多数で可決された。遂に「弾劾列車」が走り出した。この列車が「弾劾」という終着駅に到着できるかどうかは「憲法裁判所」という関門を突破できるかどうかに掛かっている。「弾劾列車」の終着駅がどうかはまだ分からない。

世論調査通りの「弾劾」投票結果

 投票には与党・セヌリ党の主流派で朴槿恵大統領の側近の崔炅煥(チェ・ギョンファン)議員1人が参加せず、残り299議員が投票に参加した。賛成が234票、反対56票、無効7票、棄権2票という結果だった。崔炅煥議員の不参加1を入れると「1234567」という数字が並ぶ面白い結果となった。
 世論調査会社「韓国ギャラップ」が12月9日に発表した世論調査によると、弾劾賛成が81%、反対が14%だった。実際の弾劾賛成234票に実質的に賛成意思表示をした無効7票を加えると241票は国会議席数の80.3%だ。韓国国会の投票権はほぼ世論調査の結果と同じだったといえる。
 韓国国会の各党の議席数は与党・セヌリ党が128議席、野党第1党の「共に民主党」が121議席、野党第2党の「国民の党」が38議席、野党第3党の「正義党」が6議席、無所属が7議席だ。野党・無所属を合わせて172議席。野党・無所属がすべて賛成票を投じたとして、賛成票が234票あったことを考えれば、セヌリ党から62票が賛成に回ったとみられる。無効票7票は「可」とだけ書かず、これに〇印や点を付けたりしたものだったという。多数の議員が投票ケージの中に携帯電話を持ち込んで自分の票を撮影したようだ。有権者を意識して「可」と書いて、携帯で撮影した後に、実際には無効票になるように〇や点を付けた議員が7人いたということだ。こうした国の運命を決める重要な投票が秘密投票というのも変なものだ。国会議員は有権者の代表なのだから、大統領を弾劾訴追するかどうかは有権者に公表すべきであろう。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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