国際法無視の中国「海洋国土」論(下)空母「遼寧」と「砲艦外交」への対応

伊藤俊幸
執筆者:伊藤俊幸 2017年1月27日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
中国海軍初の空母「遼寧」 (c)AFP=時事

 更に留意する必要があるのは、「海洋国土」という概念とともに、中国海軍はその領域を越えたブルー・ウォーター・ネイビー(外洋海軍)への変容途上である、ということだ。

「遼寧」は大国のプライド

 水中無人探査機強奪直後の昨年12月20日、中国・青島港を数隻の軍艦が出港した。中国初の空母「遼寧」と、僚艦の駆逐艦などである。ご承知のとおり、「遼寧」は旧ソ連が建造途中だった「ヴァリャーグ」を中国が購入・改装し、2012年9月に就役した中国初の空母だ。以後その動向は常に注目されてきたが、昨年末ついに西太平洋に展開した。
 青島を出港した「遼寧」は25日、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過して太平洋へ向かった。その後西進して南シナ海北側に入り、その間各海域で艦載機の発着艦訓練と実弾射撃訓練を繰り返した。帰途は台湾海峡を通り、実質的に台湾を1周する形で、1月13日午後、青島に帰港した。
 とうとう中国も本格的に空母を運用しはじめたか、と日本では大々的に報道されたが、この三角形のように台湾を回る行動はこれまでも他の中国海軍艦艇が行ってきた訓練コースの1つである。因みに今回は南シナ海を南下していない。つまり「遼寧」乗組員がようやく外洋航海ができるレベルになったということである。
 また「遼寧」は中国自身も認めるとおり「訓練用空母」である。筆者が見る限り、中国が空母保有にこだわるのはアメリカとの戦争に備えるためというより、「大国のプライド」を満足させるものであり、「砲艦外交」に使用したいからだ。

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執筆者プロフィール
伊藤俊幸 元海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授、キヤノングローバル戦略研究所客員研究員。1958年生まれ。防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。潜水艦はやしお艦長、在米国防衛駐在官、第二潜水隊司令、海幕広報室長、海幕情報課長、情報本部情報官、海幕指揮通信情報部長、第二術科学校長、統合幕僚学校長を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年8月退官。
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