マネーの魔術史 (6)

紙幣増発に疑問を呈したゲーテ

執筆者:野口悠紀雄 2017年7月6日
タグ: フランス
エリア: ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 ゲーテ『ファウスト』第2部第1幕は、メフィストーフェレスが、神聖ローマ帝国の皇帝をそそのかして、紙幣を発行する場面だ。

 皇帝は深刻な状態に陥った国家財政の立て直しに頭を悩ましていた。そこに登場したメフィストーフェレスが、地下の財宝を担保として紙幣を発行するよう進言する。「お金は、どんな深いところからでも知恵の力で掘り出せるのです」

 彼が予言したとおり、紙幣を発行したとたんに帝国の財政問題は雲散霧消してしまう。宮内卿と軍部卿が、借財を返済したと皇帝に報告にくる。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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