連載小説 Δ(デルタ)(15)

執筆者:杉山隆男 2017年7月30日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらずじ】

「愛国義勇軍」の兵士・張和平にとって、親も同然の存在だった「戦闘英雄」劉成虎将軍。彼を熱烈に慕う若手将校たちは多く、張もその末席に連なっていた。ところが、劉将軍は不正撲滅に名を借りた権力闘争に巻き込まれて失脚。若手将校たちも張もその地位を失った。現体制への復讐――「愛国義勇軍」は、家族だった。

 

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「もう時間切れだ」

 謝(シェ)のいらだたしげな声が通路に響いた。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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