日本人のフロンティア
日本人のフロンティア(5)

オペラ『ナブッコ』で感じたウクライナの「苦悩」

北岡伸一
ウクライナの首都キエフ市にある、世界遺産の聖ソフィア大聖堂(JICA提供、以下同)

 

 6月、ウクライナを訪れた。

 ウクライナは大国である。人口は4500万人、ヨーロッパではロシア、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインに次ぐ第7位である(第8位はポーランド)。面積では、60万平方キロで日本の1.6倍、ロシアを除けばヨーロッパ最大である。国土のほとんどは肥沃な平原で、伝統的にヨーロッパの穀倉と言われてきた。

肥沃な文化大国

 ウクライナは文化大国でもある。とくに際立っているのは音楽で、作曲家でプロコフィエフ、ピアニストでホロヴィッツにリヒテルという20世紀の2人の巨人がいずれもウクライナ出身である。私は昔、リヒテルがムソルグスキーの『展覧会の絵』を弾いたレコードを持っていた。1958年、ブルガリアのソフィアにおける演奏会を、オランダのフィリップスが実況録音したもので、幻の巨人リヒテル、ついにその姿を表す、という感じでセンセーショナルに報じられた。実際素晴らしい演奏で、その最後は、まことに堂々たる「キエフの大門」だった(ただし、これは展覧会の絵から得たインスピレーションを作曲したもので、モデルの門が特定できるわけではないようだ)。

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執筆者プロフィール
北岡伸一 東京大学名誉教授。1948年、奈良県生まれ。東京大学法学部、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連代表部次席代表、国際大学学長等を経て、2015年より国際協力機構(JICA)理事長。著書に『清沢洌―日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党―政権党の38年』(吉野作造賞受賞)、『独立自尊―福沢諭吉の挑戦』、『国連の政治力学―日本はどこにいるのか』、『外交的思考』など。
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