軍事のコモンセンス (28)

「軍事技術力」の強化は「研究」「実験」重視から

執筆者:冨澤暉 2017年8月12日
エリア: 北米 アジア
1974年に制式化され、873両が生産された74式戦車。だがアメリカとは違い、部隊実験を一切行わずに配備された (C)時事

 

 前々回前回と取り上げた「兵站」の一部ともいうべき「軍事技術」について考えてみたい。

ベトナム戦争末期の米国留学

 1972年秋から翌年2月まで、3等陸佐(少佐)になりたての筆者は、クリスマス休暇を含む約4カ月の米国留学を命ぜられた。その2~3年前までの先輩たちの米留学はフライング・タイガーという米軍の旅客機で往復し、現地での生活費から日当まで全て米軍丸抱えであったが、その頃から日本の円が高くなり、「日本からの留学生は日本の予算できてくれ」ということになった。それまで外国旅費(予算)枠を殆ど持っていなかった自衛隊は、仕方なく留学生の数を減らし、また、米国滞在期間を短くした。それまでは米軍学校の各種課程学生として籍をおき、米軍将校や世界各国からの留学生とともに7~8カ月以上は机を並べて勉強していたのだが、筆者の場合はそんなに長く米国に置いておけないという理由で、「〇〇課程入校」の名目ではなく「隊付き研修(On the Job Training)」という任務となった。

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執筆者プロフィール
冨澤暉(とみざわひかる) 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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