インテリジェンス・ナウ

「核兵器のない世界」を目指す男が核のボタンを握ったら

執筆者:春名幹男 2008年7月号
エリア: 北米 ヨーロッパ

 核大国である米国とロシアでの大統領交代。その裏では「核のボタン」の引き継ぎという極めて厳かな儀式が行なわれる。 ロシアでは大統領職はプーチン氏からメドベージェフ氏に引き継がれた。ひょっとしてプーチン氏が核のボタンを掌握し続けるかもしれない、とひそかに予測していたが、邪推に過ぎなかった。だが今後の展開次第では、プーチン氏が大統領に指示する局面があるかもしれない。 五月七日の新大統領就任式の直後、クレムリン内の一室でセルジュコフ国防相が立ち会い、核のボタン引き継ぎ式が行なわれた。「同志、最高司令官殿! わが国の戦略戦力の指揮権を引き渡します」と大統領付き将校が宣言し、新大統領のもとに「核のブリーフケース(カバン)」を運び込むシーンがロシアのテレビで放映されたという。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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