風が時間を (19)

まことの弱法師(19)

執筆者:徳岡孝夫 2017年10月29日
タグ: アメリカ 日本
エリア: 北米 アジア

 ジャーナリズム学部の主任教授マーフィー先生に挨拶に行った。日本の大学教授と同じような小部屋に書棚を置いた研究室だが先生は簡単な説明のあと、もっぱら日本の話をした。先日通信販売でノリタケのティーセットを買ったが実に見事な品だ。「戦後15年、日本はよく立ち直った」とベタ褒めだった。「陶器以外にももっといろんな品を造っていますがね」と言いかけて私は黙っていた。

 留学生担当の教授は「あなたの英語力なら不要だと思うが、一応初歩英会話の時間に出てもらいます」と言った。その教授が別れ際に「I will see you later」と言ったので私は思わず「何時のディナーですか?」と問いそうになった。丁寧すぎる言葉遣いをする人は日本にもアメリカにもいた。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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