マネーの魔術史 (22)

実際には中央銀行の金利操作で機能した「金本位制」

執筆者:野口悠紀雄 2017年10月26日
タグ: イギリス 日本
エリア: ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 前回、金本位制が自動調整機能を持つというヒュームの「物価・正貨流出入メカニズム」を紹介した。

 しかし、このモデルは現実とはかけ離れている。実際には、金本位制はもう少し複雑な形で機能した。

 第1に、ヒュームのモデルは、マネーとして金(きん)のみが流通している世界を考えているが、現実には銀行券も流通している。第2に、このモデルでは国際的な決済は金を移動することでなされるとしているが、実際には国際的な資本移動がある。このため、国から国へ運ぶ地金を積み込んだ船で外海が埋まる、というようなことにはならなかったのである。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top