連載小説 Δ(デルタ)(39)

執筆者:杉山隆男 2018年1月13日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

秘密部隊デルタは、センカクに上陸した愛国義勇軍を掃討するため、護衛艦「かが」艦内での最終準備に余念がなかった。ところが作戦を司るはずの官邸では、閣内分裂が起きようとしていた。次の次の総理を狙う田所外相が、緒方総理の方針に異を唱えたのだ。一方、乗っ取られた巡視船「うおつり」では――。

 

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「うおつり」に居残った愛国義勇軍の裏切り組、謝(シェ)らはどうやら船の3階部分に当たる第2船橋甲板にいるらしかった。このフロアにはブリッジに隣接して、OIC、オペレーション・インフォメーション・センターがあり、その一角は通信室になっていて、無線や気象データの受信、衛星通信などのコンソールがならんでいる。おそらくここの装置を使って、謝らは自分たちを中国本土からコントロールしている国家安全部といった諜報機関のエージェントと連絡をとりあっているのだろう。魚釣島に渡った愛国義勇軍メンバーの最終的な人数や氏名、さらに乗っ取った巡視船の現況などを報告し、今後の対応について指示を仰いでいるのかもしれなかった。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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