連載小説 Δ(デルタ)(47)

執筆者:杉山隆男 2018年3月10日
エリア: 北米 アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

首相官邸で、護衛艦「かが」艦上で、巡視船「うおつり」で様々な動きと思いが交錯する中、秘密部隊デルタはセンカク目指して「かが」を飛び立った。だがその行く手には、新たな動きが――。

 

     34(承前)

「機長、アンノウンの航空機が2機、5時の方向から急接近してきます」

 デジタル化が進んだロクマルのグラスコックピットのほぼ中央に淡いグリーンに染まったレーダー画像が浮かび上がっている。左側の操縦席に座る機長が視線をやると、コーパイの指摘の通り、画像の中心に向かって右斜め後方から2つのブリップがかなりのスピードで近づいている。コックピットの暗がりの中でその2つの輝点は星のようにひときわ強い光を放っている。2点は平行にならんでいるわけではなく、ひとつは前方を行く点からわずかにずれて、つき従うように動いている。タンデム、2機編隊である。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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