灼熱――評伝「藤原あき」の生涯(3)

執筆者:佐野美和 2018年7月16日
エリア: アジア
まだ髷を結っていた頃の藤原あき。正確な撮影年は不詳。この後、あきは波瀾万丈の人生を送ることになる(自伝『雨だれのうた』(酣燈社)より)

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 昭和57(1982)年、東京が最も寒くなる季節の2月8日午前3時半前、その惨劇は起きた。

 新聞テレビの報道記者たちは本社からの「ホテルニュージャパン火災」の一報で叩き起こされ、それぞれの自宅から駆け付けた。タクシーで赤坂見附まで向かう途中、国道246号の青山一丁目あたりから高く上がる炎と黒煙が見てとれる。外堀通りの現場付近はすでに警視庁により封鎖されており、100メートルほど手前から走って近づくと、無数の消防車や救急車の塊の脇に並べて横たえられたいくつかの遺体が目に入る。煙の猛追に逃げ場がなく、窓から飛び降りた人たちだった。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
佐野美和(さのみわ) 政治キャスター。東京都八王子市出身。株式会社チェリーブロッサムインターナショナル代表取締役。大学在学中、フジテレビの深夜番組として知られる『オールナイトフジ』のレギュラーメンバー「オールナイターズ」の一員として活躍した。1992年度ミス日本に選ばれる。TBSラジオのパーソナリティ、TBSラジオショッピングの放送作家を経て、1995年から2001年まで八王子市議会議員として活動。以後はタレントとしてテレビ出演のほか、講演会も精力的に行う。政治キャスターとしてこれまで600人以上の国会議員にインタビューしている。主な書籍に『アタシ出るんです!』(KSS出版)、『あきれたふざけた地方議員にダマされない!』(牧野出版)などがある。
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