「君主号」の世界史 (9)

共存から「混一」へ

執筆者:岡本隆司 2018年7月21日
エリア: アジア
唐の玄宗。その治世の後半、安史の乱のあたりから統合がやぶれ、再び長い混乱の時代に突入する

 

 唐の統合がやぶれると、東アジアは解体の一途をたどってゆく。東アジアも中国も、また華北・中原そのものが、かねてより多種族のるつぼであり、唐の「天下」統一がむなしく終わったのも、そんな多元性が高まってきたからである。

東アジアの解体

 これを君主号という視座から見てみると、皇帝=天子は紀元前・漢の時代、漢人土俗の儒教と結合してできた概念にすぎない。いかにユニヴァーサルな存在だといっても、漢人にしか通用しない皇帝=「天子」では、胡漢・華夷から成る「天下」を治めきれなくなっていた。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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