ブックハンティング・クラシックス (53)

「対外援助はなぜ必要か」を考えるとその「存在理由の危うさ」に辿り着く

執筆者:平野克己 2009年9月号
エリア: 北米

『アメリカの対外援助政策―その理念と政策形成―』川口融著アジア経済研究所 1980年刊(現在は古書としてのみ入手可能) アジア経済研究所を創設した初代所長、東畑精一は、「アジ研」を作ったことでなにが達成されたかと訊ねられて、「なにほどのこともないが古書市場で値がつく本を数冊出せたことは嬉しい」と答えている。なにで読んだか忘れてしまったが、さすが大東畑、凡人とはいうことが違うと感服した。 書物の生命は短い。ほとんどの本は数年で寿命が尽きる。本書は一九八〇年に定価四千円で世に出て、いまでは六万円を超す値がついている。この手の本が高価なのは印刷部数が少ないからなのだが、普通はその後古書市場にまわって徐々に値を下げていくものだ。だから、川口氏が書いたこの本は特別なのである。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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