突然の脳梗塞で退陣を余儀なくされた小渕首相。一見、凡庸なる政治家の非凡さはどこにあったか。いまだ語られざる小渕氏の実像に迫り、その退陣と森政権誕生の不透明な経緯を鋭くつく内幕レポート。
小渕恵三。どこにも鋭さを感じさせることのない凡庸な人物である。私の知る多くの政治家の中の一人としてこの人物を三十年近く見てきて、比較的最近気がついたのは、この凡庸だとだれもが思う人物の非凡さは、己が凡庸であることに早くから気がついているというところにあるということだ。
政治記者として佐藤栄作から小渕恵三まで十六人の内閣総理大臣を見てきた。この国の人々は、志半ばにして総理が病に倒れたときにだけ、「総理」の存在を意識する。総理が執務執行能力を欠いてはじめて国家の危機管理と総理大臣の関係について思いをはせる。
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