「凡庸なる非凡」小渕恵三という人生

執筆者:田勢康弘 2000年4月号
タグ: 日本
エリア: アジア

 突然の脳梗塞で退陣を余儀なくされた小渕首相。一見、凡庸なる政治家の非凡さはどこにあったか。いまだ語られざる小渕氏の実像に迫り、その退陣と森政権誕生の不透明な経緯を鋭くつく内幕レポート。

 小渕恵三。どこにも鋭さを感じさせることのない凡庸な人物である。私の知る多くの政治家の中の一人としてこの人物を三十年近く見てきて、比較的最近気がついたのは、この凡庸だとだれもが思う人物の非凡さは、己が凡庸であることに早くから気がついているというところにあるということだ。

 政治記者として佐藤栄作から小渕恵三まで十六人の内閣総理大臣を見てきた。この国の人々は、志半ばにして総理が病に倒れたときにだけ、「総理」の存在を意識する。総理が執務執行能力を欠いてはじめて国家の危機管理と総理大臣の関係について思いをはせる。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
田勢康弘(たせやすひろ) ジャーナリスト。1944年中国黒龍江省生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部記者、ワシントン支局長、論説副主幹、コラムニストなどを歴任し、2006年に退社。1996年から1年間、米ハーバード大学国際問題研究所フェロー。また1996年には日本記者クラブ賞を受賞。著書に『指導者論』(新潮社)、『国家と政治』(NHK出版新書)、『総理の演説』(バジリコ)など多数。また、『田勢康弘の週刊ニュース新書』(テレビ東京系)の番組ホストも務めた。
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