饗宴外交の舞台裏 (29)

フランス料理に焼酎! 前代未聞のエリゼ宮晩餐会

執筆者:西川恵 2000年5月号
タグ: フランス
エリア: ヨーロッパ

 森新首相は四月二十八日から九日間、沖縄サミットに参加する米欧露七カ国を歴訪した。領土問題や平和条約交渉を抱えたロシアは別にして、米欧六カ国はいずれも滞在時間が二十四時間に満たない駆け足訪問だったが、その中でわざわざ晩餐会でもてなしたのが親日家のシラク仏大統領である。

 五月二日夜、エリゼ宮東翼の「ポルトレ(肖像)の間」。裏庭に面したさして大きくない広間は、かつてはナポレオンの后ジョゼフィーヌの居室で、儀式ばらない親密な会食を催すときに使われる。この夜の会食者は十五人前後。しかもサミットの議題などについて意見交換するワーキングディナーで、実務重視の饗宴だった。メニューは次の通りである。

カテゴリ: 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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