ロシアの版図を超えて広がるスラブ民族の多様性

執筆者:浅井信雄 2000年6月号
エリア: ヨーロッパ

 二〇〇〇年五月、ロシアの新大統領に就任したプーチンの執務室には、ピョートル大帝の肖像が飾ってあるそうだ。在位一六八二―一七二五年の大帝は、西欧の新しい技術を導入、領土を拡大し、ロシアを西欧列強の地位に引き上げた。まさに「強いロシア」の指導者のモデルの感がある。 ピョートル大帝の国内反乱への対応は残酷であったが、ロシアから分離を策したチェチェン共和国に対するプーチンの武力弾圧もまた、西側世論の非難を招くほど断固たるものである。 また大帝は、全国を八県に分割して県知事に大権を与え、国家の統合強化と安定化に成功した。それに学ぶかのように、プーチンも就任直後、ロシア連邦を七つの行政管区に分割し、それぞれに大統領直属の全権代表を置く措置をとっている。連邦崩壊を阻止するため、地方の独自性を規制する中央集権体制の強化である。

カテゴリ: カルチャー
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