饗宴外交の舞台裏 (31)

フセイン大統領夫人「極秘訪日」10年目の真実

執筆者:西川恵 2000年7月号
タグ: 大統領 日本
エリア: 中東

 イラクがクウェートに侵攻した湾岸危機から八月二日で十年を迎える。湾岸危機とそれに続く戦争は、中東に新秩序をもたらし、イスラエル・パレスチナ和平を中心とした包括和平に道を開いた。この十年、中東の政治地図は著しく変貌したが、当のフセイン・イラク大統領だけは孤立感を深めながらも権力を保持している。

 ところでいま振り返ると、西側諸国には「イラクのクウェート侵攻はあり得ない」とタカをくくっていたフシがあった。イラク軍はクウェート国境に集結していたが、これはフセイン大統領一流の駆け引きで、武力で他国を併合するような時代錯誤的なことはよもややるまいと思い込んでいたのだ。日本も同様だったことは、イラク軍侵攻時、イラク、クウェート駐在の日本大使がいずれも夏季休暇をとって任地を離れていた一事からも明らかだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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