オノラリイ・ホワイト 深田祐介『新西洋事情』

執筆者:船橋洋一 2001年2月号

 手練の国際ビジネスマンでも、冠婚葬祭となるとちょっと勝手が違う。 取引先の英国の大百貨店会長がこちらの招待で訪日した折り、自動車事故で死去するという出来事があった。「会長の死骸はドライ・アイスに漬けてそのまま運んでもらわなきゃいけませんな」と支店の石倉総務課長がつい事務的に言ったところ、英国人のリチャード・ヒューム支店次長が、それを聞きとがめた。「ミスタ・イシクラ、死骸って言葉は使っちゃいけない。絶対にいけない。ご遺体、そう呼ばなくちゃならん。いいですか。ご遺体ですよ」 リメインズがとっさに出てくるような気の利いた英語教育を日本のビジネス戦士たちは受けていない。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一(ふなばしよういち) アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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