「日本の危機」を体現する土田正顕・東証理事長

執筆者:喜文康隆 2001年3月号
タグ: 日本 日銀

 株価下落が日本を襲っている。一九八九年末、バブル絶頂期の日経平均の高値からみると「半値八掛け二割引」という相場反転のゾーンにまで下がりながら、下値の見えない現実。 危機が表面化すると大衆社会では必ずスケープゴート(生け贄の山羊)探しがはじまる。スケープゴート探しは、常に危機のある面をついているが、その全てではない。従って、大衆がその欲求を満足させることはできても、問題の本質的な解決にはならない。現在のスケープゴートは、支持率一〇%を割り込んだ森喜朗政権であり、速水優日本銀行総裁である。 しかし、スケープゴートにはならないけれども、森総理や速水総裁よりも、もっと日本のシステム危機の本質を体現している人物がいる。東京証券取引所の土田正顕理事長である。かつて大蔵省(現財務省)銀行局長として“経済失政”を担った人物が、なんの検証もないまま証券市場のリーダーにおさまり、取引所の「株式会社化」に旗をふる姿こそ、変わらない日本システムと底なしの株価下落の象徴である。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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