アジアに割り込んだ「ムスリム社会」拡大の歴史

執筆者:浅井信雄 2001年10月号

 イスラム教徒のことを意味するムスリムが、最近では「ムスリム人」というように一民族の扱いを受けることもある。イスラムに関係ある出来事が続発して、ムスリムを一括りに表現することが多いからだろう。 民族としてほぼ認知ずみの「ユダヤ人」の場合と似ているが、同じでもない。ユダヤ人もムスリム人も個々人の民族的素性を秘めている点は共通しているものの、ムスリム人の方が民族的素性がより色濃くにじみ出ている。 アジアの広大な地域には、多くのムスリム社会が存在する。ムスリム人としての大きなアイデンティティーの傘の下に隠された住民の民族的素性は、実に多様だ。ムスリム人は、インド亜大陸ではインド・アーリア系、インドネシアやマレーシアではマレー系、中央アジアではトルコ系、アフガニスタンではパシュトゥーン系が多い、といった具合である。

カテゴリ: カルチャー
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