水の都ベニス最大の観光スポット、サンマルコ広場は、週に二回は水浸しになる。これを防ぐべくイタリア政府が動き出した。[ロンドン発]一九六六年は、大抵のイタリア人にとって、サッカーのワールドカップで北朝鮮にまさかの敗北を喫した年として記憶されている。しかし、水の都ベニスの住人にとっては、史上最悪の大洪水が発生した年だ。以来ずっとベニスは水害に悩まされており、今や住民はいずれ街が水没してしまうと怯えている。 ここへ来て、イタリア政府はベニスを救うため、あるプロジェクトを推進しようとしている。計画の名は「モーゼ(MOSE=Modulo Sperimentale Elettromeccanico)」。四十億ドルかけて、ベニスを構成する島々のある潟とアドリア海をつなぐ自然の水門に扉をつけようというものだ。扉は高潮が発生すると上昇して海水の浸入を防ぎ、水位が元に戻れば下降する。しかし、このビッグ・プロジェクトは侃々諤々の議論を呼んでいる。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン