目指すな日本のビル・ゲイツ

執筆者:成毛眞 2003年6月号
タグ: 日本

 三年前にはじめた会社がやっと実質黒字になった。社員数も五十名に達し、これからが本番というところ。しかし、ここにきて少なからぬ人々から上場する気がないかと聞かれる。僕の答えは「考えたこともない」である。 ここ数年、「目指せ日本のビル・ゲイツ」を合言葉に、設立間もないベンチャーに資金が投入され、その多くが失敗に終わった。多くの人々はいまだにベンチャーバブルの後遺症を患っているように思える。教訓が生かされていないのだ。 そのビル・ゲイツのマイクロソフトは一九七五年に設立され十一年後の八六年に上場、今年で二十八周年を迎える企業だ。設立から紆余曲折をへて内部留保を厚くし、満を持しての上場だった。ビル・ゲイツを目指すのであれば、わが社もあと八年は在野でがんばる必要がある。

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執筆者プロフィール
成毛眞(なるけまこと) 中央大学卒業後、自動車部品メーカー、株式会社アスキーなどを経て、1986年、マイクロソフト株式会社に入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。2011年、書評サイト「HONZ」を開設。元早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に『面白い本』(岩波新書)、『ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)、『これが「買い」だ 私のキュレーション術』(新潮社)、『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『金のなる人 お金をどんどん働かせ資産を増やす生き方』(ポプラ社)など多数。(写真©岡倉禎志)。
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