饗宴外交の舞台裏 (66)

エビアンサミットを支えたホテル学校の生徒たち

執筆者:西川恵 2003年7月号
タグ: フランス 日本
エリア: ヨーロッパ

 フランスのエビアンで六月一日から三日まで主要国首脳会議(サミット)が開かれた。一日の昼食から三日の昼食まで計五回、首脳らの食事を受け持ったのは会場となったホテル・ロワイヤル・パルク・エビアンの料理長ミシェル・リンツ氏(四八)だった。 ただ、サミットを主催する度に食事では粋な趣向を凝らすフランスだけに今回も思わぬ仕掛けを用意していた。中日の二日、昼と夜の食事はリンツ氏の指導で地元のホテル学校「サヴォワ&レマン」の生徒が作り、給仕も同校の生徒が担当したのである。日本でいえば高校生の年代である。 ホテル学校は料理と給仕のプロフェッショナルを育てる専門学校で、同校はフランスでは最も古い一九一二年に設立された。パトリック・ブルッスー校長にエリゼ宮から「サミット首脳の食事と給仕に生徒が参加していただけるか」と話があったのは今年初め。「世界のVIP相手に腕を振えるまたとない勉強の機会」と、校長は二つ返事でOKした。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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