饗宴外交の舞台裏 (74)

“聖域”を開放するほどの歓待

執筆者:西川恵 2004年3月号
エリア: ヨーロッパ

 下にも置かない歓待とはこのことだろう。一月二十六日から三日間、中国の胡錦涛国家主席を国賓で迎えたフランスのことである。 昨年六月のエビアン・サミット(主要国首脳会議)でフランスを訪れている胡主席が、アフリカ歴訪の途中とはいえわずか七カ月後に再訪した背景にはフランスの強い要請があった。ドゴール元大統領が他の先進国に先駆けて中国と国交を結んで今年で四十年。中国の旧正月期間中の国交樹立の一月二十七日に胡主席を迎え、両国関係を強化したい狙いがフランスにあった。イラク戦争後の外交守勢を挽回し、構想する多極化に布石を打つ絶好の機会でもあった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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