韓国が面白すぎて欲求不満

執筆者:黒田勝弘2004年8月号

 ぼくのソウルでの記者生活は二十年以上になるが、いつも感じている欲求不満がいくつかある。その最大のものはこの地のことを、なかなか全体として伝えられないことだ。つまりソウル駐在の記者として、できるだけ韓国や朝鮮半島の全体像を読者に伝えたいと思うのだが、ままにならないのだ。 記者はニュース稼業であるため、どうしても日々の出来事に追われる。ニュースというとやはり政治や外交を中心にお硬い話がほとんどだ。その結果、そうしたお硬いニュースだけでその国を伝えることに、いつも内心忸怩たるものがある。 それでも、こうした欲求不満を解消するためぼくなりの工夫と努力をしてきた。たとえば紙面では時間に追われないコラムに結構、気を使っている。コラムを通じた多様な情報の提供というわけだ。 それからぼく個人としては出版や雑誌への寄稿も大いに活用してきた。たとえば、韓国の“食”への関心がそうだ。“食”こそ文化の核心と思うが、このところコラムを含め韓国情報の多様化の方法として“食”にこだわっている。 ところである国、ある民族を理解するためには、その国の女性を知りなさいといわれる。女性こそがその国、その民族の文化をもっともよく体現しているからだ。したがってジャパノロジストとかコリアノロジストといった世界各国の文化人類学者など外国研究者の多くが、研究対象の国の女性と結婚しているのも一理がある。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。