二〇〇三年一二月一六日、本田技研工業は、自社開発したビジネスジェット機「ホンダジェット」の初飛行に成功したと発表した。ライト兄弟が人類初の動力飛行に成功したのが一九〇三年一二月一七日。ホンダ広報部によると、「八六年のプロジェクト発足から一七年。開発陣は、なんとしても一〇〇周年に間に合わせたいと不眠不休で試作機の整備を進めていた」という。ホンダジェットは現在、飛行機として飛んで良いというお墨付きである「型式証明」を得るため、米ノースカロライナ州の空港で試験飛行を繰り返している。ちなみにライト兄弟の初飛行も同州のキティホークが舞台だった。夢に賭ける、なんともホンダらしいエピソードである。 ただ、この試作機についての情報は非常に少ない。ニュースリリースと、開発責任者である藤野道格チーフエンジニアが米国航空学会誌に発表した論文でしか知ることができない。実はホンダが、開発担当者への取材を一切拒み、広報対応にとどめているからである。 公表資料によると同機は、機体もエンジンも自社開発した“純ホンダ製”。T型尾翼をもつ全長一二メートル、全幅一二メートルの双発機で、ずんぐりとしている。乗員を含めて六人乗りで、最高巡航速度は毎時七七八キロ、航続距離は約二〇〇〇キロ。主翼の上にエンジンを置くことで胴体内にエンジンを支える構造が不要になり、客室内容積が従来機に比べて三割も増えた。胴体をすべて炭素繊維複合材料で作ったことで、従来機に比べてエンジンで一割、機体構造で三割(全体で四割)の燃費向上を実現した。

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