謎のテロリストザルカウィの素顔

執筆者:木辺秀行2004年8月号

[アンマン発]治安悪化に歯止めがかからないイラクで、米軍が血眼になって行方を追う人物がいる。アブムサブ・ザルカウィ。ヨルダン出身で国際テロ組織アルカーイダとつながりを持つ三十八歳のテロリストだ。 ヨルダン大使館爆破テロ、国連事務所爆破テロ、米民間人ニック・バーグ氏殺害、韓国人ビジネスマン金鮮一氏殺害……。戦後のイラクでザルカウィが関与したとされるテロ事件は枚挙にいとまがない。その知名度と影響力はいまやオサマ・ビン・ラディンに比肩する。 ヨルダンの首都アンマンから東に車でおよそ一時間の距離にあるザルカウ村が出身地だ。本名はアハマド・ファーデル・ハライラといい、ザルカウィという通称は「ザルカウ村の出身」であることを示す。アブムサブはアラビア語で「ムサブの父」で、息子ムサブの誕生後に「アブムサブ」を名乗り始めた。 石造りの生家は粗末なものだ。向かいの雑貨屋の店主によると、ザルカウィことアハマドは小さいころから問題児として有名だった。酒を飲んでは悪い仲間と遊び歩き、ナイフで人を傷つけて刑務所に送られたこともあった。「イスラムの闘いだって? 彼がモスク(礼拝所)にいるところなんてみたこともないよ」とこの店主は言う。

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