なぜ「チェイニー問題」はブッシュを悩ませたのか

執筆者:アレクシス・シメンディンガー2004年9月号

著しくイメージダウンしたチェイニーを副大統領候補に留めるべきか、それとも大胆な方針転換をすべきか。共和党内部の意見は割れた。[ワシントン発]現在、米副大統領ディック・チェイニーは、ブッシュ大統領の再選に向けて精力的に全米各地で選挙運動を展開中だ。そして大統領やチェイニー自身、またブッシュ再選を支援する各種団体も含め多くの共和党員は、今後もチェイニーがブッシュとコンビを組む副大統領候補として、大統領に寄り添うことは間違いないという。 だが、こうした主張も、八月半ばの時点で、ワシントンに根強く広がる疑念を払拭するには至っていない。民主党の大統領候補ジョン・ケリーと、カリスマ的人気を誇る南部出身の副大統領候補ジョン・エドワーズの手強いチームを相手に大接戦を演じるなかで、ブッシュが大胆な方針転換に打って出ないともかぎらないからだ。 行方が注視されているのは――特にチェイニーを疑問視する共和党穏健派のなかで密かに取り沙汰されているのは――果たしてブッシュは八月三十日からの共和党全国大会の前に、チェイニーより選挙戦で有利に働く別の副大統領候補を抜擢するかどうか、ということだ。 彼らが懸念しているのは、選挙民が抱くチェイニーのイメージの変質だ。副大統領の座にあった四年間が過ぎるうちに、経験豊富で安心できる大統領の右腕といったかつての理想像は崩れ、いまや秘密主義で誤算続きの助言者といったイメージに変貌している。サダム・フセインが秘匿していると読んだ大量破壊兵器は発見できず、イラク解放についても、期待した民衆の感謝はかけらも見られない。しかも、副大統領就任前にチェイニーが最高経営責任者(CEO)を務めていた大手石油掘削会社ハリバートンは、イラク再建事業を受注したアメリカ企業のなかでも最大級の契約を受注し、議論の的になっている。

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