今なお日本のものづくりの確かさを表現する時に「メイド・イン・ジャパン」という言葉が多用される。それは今さらだが、一九八七年に出版されたソニーの盛田昭夫の『MADE IN JAPAN』に由来している。 改めて同書を読み直すと、アメリカなどにはなくて日本のものづくりにある強さとは具体的にどのようなものなのか、実は盛田はあまり語っていないことに気づく。盛田は営業の人間であり、ソニーブランドをいかに作るかに力を注いでいたから致し方ないのだが、強いて拾えば、テクノロジー・製品企画・マーケティングの共同作業があること、ウォークマンに象徴されるようなイノベイティブな製品コンセプトの提示、つまり独創性が勝負所だとしているぐらいだ。 それでも『MADE IN JAPAN』が、日本製品の優秀さとものづくりの力を示した著作として受け入れられたのは、他国を圧倒するだけの競争力が日本製品にはあったからだろう。しかし、今一度振り返って、日本のものづくり力の強さとは、製品そのものなのか、部品なのか、大量に作る生産技術なのか、はたまたそれらの総合力なのかを考えてみると、意外なことに結論がでない。 この連載ではテーマを絞り込んで一つひとつ検証している。最初のテーマとした航空機製造では、設計部門(川上)と製造部門(川下)が「技工接点」の思想を背景に、製造段階で発生するであろう問題を予測して設計段階で解消していく“擦り合わせ”の巧みさをみてきた。それは、共同組織としてのものづくりの力と言っても良いものだった。

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