外交問題が山積する国会から一人の“外交通”が飄々と去った。椎名素夫氏(七四)。四半世紀にわたる議員活動を通して、国際問題に対する定見を持ち続けてきた。「議員バッジを外したら周りの景色が良く見えるようになりました。視野が広がったんだね。これまで人に会うのは仕事で、用もなくということがなかった。選挙区に帰っても、人のいない綺麗な風景を眺める機会なんてない。しかし、用事はないけれど、という部分で、人は利口になれると思うんです。だから億劫がって家にいるのではなく、秋頃から用もなく動きはじめようかと思っています」 日曜朝の政治番組は「気分が悪くなるから」見ない。朝日新聞は「イジイジしているのがイヤで」読まない。産経新聞の国際面に目を通し、ロンドンエコノミストの頁をめくり、インターネットでインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの「オピニオン」や「エディトリアル」を覗く日々。 最近では、中国で行なわれたサッカーのアジアカップにおける日本代表への野次の酷さに唖然としたという。「九二年の天皇陛下の訪中に際して、外務省のチャイナスクールの人間は『これで歴史の謝罪はおしまいで、友好的な日中関係になる』などと言っていたんです。でも、こちらがいくら謝罪しても、相手がそれを真摯に受け止めなければ、何回繰り返したって何の役にも立たない。池田行彦さんが外相の時に『経済が繁栄すれば中国にも中産階級ができて民主化を求める。民主的な社会になれば変わります』と理屈を言っていましたが、これだけ反日教育で鍛え上げられた連中が民主国になったとたん、『はい、わかりました』となるんですかね。『所得があるレベルを超えたら変わる』とも聞きますが、そんなに簡単なものなのか。あまりに楽観的で、その場しのぎに思えてしまう」

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