新START批准はオバマ政権の予想外の金星

執筆者:渡部恒雄2010年12月29日

 米上院は12月22日の本会議で、ロシアとの核軍縮条約である新START(戦略兵器削減条約)の批准を賛成71、反対26で承認した。これは、中間選挙で大敗したオバマ政権にとってはかなりの「金星」といえる。11月の時点では、共和党側が敢えて「核なき世界」でオバマ外交に得点を挙げさせるような協力姿勢をとることはないだろうという悲観的な見方が支配的だったからだ。

 この逆転成功の理由のひとつには、他のふたつの重要法案、ブッシュ減税の継続と、同性愛者の軍への入隊禁止規制の撤廃同様、これまでの民主党議会だけに頼る手法から、共和党議会の協力を求める手法に切り替えたことがある。オバマ政権は、中間選挙での敗北により、2011年の議会からは共和党議会からの協力なしには法案は成立しないという厳しい現実が待ち受けているため、今後の新しい政治の現実の先取りともいえる。

 もうひとつは、一定の世論の支持があり、これを効果的に使ったことだろう。オバマ政権は大統領を先頭に、批准のためのキャンペーンを張った。例えば、クリントン国務長官とゲーツ国防長官は、11月15日にワシントンポスト紙に寄稿して、新STARTへの超党派の支持を訴えた。ソ連・ロシアとの核軍縮は40年にわたり、米国が超党派で進めてきたものであるという点である。ゲーツ国防長官はブッシュ政権でも国防長官を務めているし、コリン・パウエル、ジェームズ・ベイカー、ジョージ・シュルツの共和党の元国務長官や、ブッシュ(父)元大統領も書面で批准への支持を明らかにしている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。