「鳩」が「菅」を許さない理由

執筆者:野々山英一2011年1月6日

 民主党は、事実上の分裂状態で新年を迎えた。元旦、東京・千代田区永田町の首相公邸では菅直人首相が新年会を開き、45人の議員が集まった。一方、世田谷区深沢にある小沢一郎元代表の私邸には約120人が集結した。
 昨年の元旦は、小沢邸を166人が訪問した。「目減りした」との見方もあるが、政治資金規正法違反で強制起訴される男の家に出向くのは相応の覚悟がいる。120という数字は相当なものだ。
 小沢邸の玄関先では、料理人がマグロ解体ショーを行ない、刺し身を振る舞った。「マグロじゃなくて民主党の解体だったりして」という笑えないジョークも出たというが、自分たちが世論の指弾を受けているという悲壮感はなかった。
 なぜ小沢グループの結束は保たれているのか。選挙で世話になった義理もあるだろう。純粋に政治理念を尊敬している若手もいる。だが結束の背景にはもう1つの要素がある。鳩山由紀夫前首相の存在だ。

小沢支持グループの「錦の御旗」

未完成に終わった「幻のマニフェスト」
未完成に終わった「幻のマニフェスト」

 首相を辞任する時、次の衆院選には出馬しないと明言しながら引退を撤回した鳩山氏に対する国民の目は厳しい。だが、党内の評価は違う。  鳩山氏は民主党の創設者だ。結党時には弟の邦夫氏と2人で15億円を提供したとされる。鳩山氏がいなければ、今の民主党はない。もちろん首相在任中の軽い言動は、党内でも顰蹙を買ったが、それでも党の象徴としての存在感は残る。今、菅政権を支える仙谷由人官房長官、玄葉光一郎党政調会長らも決して鳩山氏を悪くは言わない。小沢氏は政敵と割り切っても、鳩山氏は敵に回したくないのだ。  その鳩山氏が、今回の党内抗争では完全に小沢氏側についている。それが小沢氏支持グループの「錦の御旗」になっている。  退陣後、鳩山氏はある冊子をひそかに持ち歩いている。表紙には、金色と青のストライプのネクタイを締めた鳩山氏が全力疾走しているイラストが描かれ、タイトルは「Manifesto もっと前へ進めたい。」とある。  鳩山氏のマニフェストと言えば「政権交代」を前面に出した2009年衆院選の時のものが有名だが「もっと前へ」は、その後、鳩山氏が首相になってから10年7月の参院選に向けて準備したものだ。6月上旬、イラストと同じポーズの写真を撮影して印刷に出す運びだったが、その直前に鳩山氏が辞めたため未完成に終わった。

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