「財務省的思考」で国民の信頼を失う民主党

執筆者:富山創一朗2011年1月18日
与謝野氏(右)の入閣で財務省カラーは鮮明に(c)AFP=時事
与謝野氏(右)の入閣で財務省カラーは鮮明に(c)AFP=時事

 平成23年度(2011年度)予算案の国会審議が始まる。前年度予算は政権交代でドタバタが続いていたから、民主党政権にとって渾身の予算案と呼べるのは今年度予算からだ。いや、そうなるはずだった。だが、現実には政権交代前から民主党が掲げていた「理念」はことごとく消え失せ、何とも切れの悪い予算案になっている。  例年よりも国会開会が遅れる中で、自民党や公明党、みんなの党など野党は、こぞって批判の声を強めている。そんな批判に「政府案が最終ではなく、議論で変えていい。合理的な修正はやぶさかではない」(岡田克也・民主党幹事長)という発言が飛び出すのも、予算を作った民主党自身に「自信がない」ことの表れと言えるだろう。

2年連続で税収を上回った「借金」

 予算全体の規模を示す一般会計の総額は92兆4116億円。これは過去最大だ。一方で歳入は税収が40兆9270億円にとどまり、新規国債発行額は44兆2980億円に達する。国債発行という「借金」による収入が「税収」を2年連続で上回る異常事態に陥るのだ。
 借金が税収を上回ったことは過去に1度しかないという。昭和21年度、つまり第2次世界大戦に敗れた翌年度だ。戦費が賄い切れないほど巨額になったことが国債発行依存の理由とされがちだが、現実はやや違う。戦争中も国債発行額よりも税収の方が多かったからだ。
 政府に力があり、国民が政府を支えようとすれば、国民は増税を受け入れる。敗戦直後は政府が国民の信頼を失い、国債発行に依存せざるを得なくなった、と見るのが正しい解釈ではないか。そして、「平和で民主的な国家を作る」という戦後の政府の方針を再び国民が信頼し、税収がメインの財政に戻っていった。
 2年連続で国債発行が税収を上回る現状をどう考えるべきか。敗戦後の日本以上に、国民が政府を信頼していない、あるいは失望している、ということではないか。その意味を熟知しているはずの財務省がなぜ、そんな「政府不信任」ともいえる予算案を作ったか。
 仮説は2つある。民主党政府を早期に葬るため、という考え方と、「財政危機」を煽ることで念願の消費税増税への道筋を付けるため、という考え方だ。どちらにせよ、財務省にとっては好都合というわけだ。これと平仄を合わせるように、自民党の谷垣禎一総裁は「財政再建を優先すべきだ」と語っている。

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