台湾政治-切れすぎたカミソリの退場

執筆者:野嶋剛2011年1月20日

台湾の与党国民党の秘書長、金溥聡が月内の辞任を表明しました。金は馬英九総統の唯一無二の側近で、支持率低迷で選挙連敗の事態を受けて今から1年ほど前、日本で言うところの幹事長にあたる秘書長に就任しましたが、突然の辞意表明に、台湾政権に激震が走りました。

表むきの金のコメントは「段階的任務を終えた」とし、馬総統も2012年春の総統選に向けて、選挙チームに入ってもらうことになると取り繕いました。しかし、実際のところ、先の五大都市選挙での国民党の事実上の敗北を受けて、金のこれまでの強引な党改革や候補者選定に対する党内「守旧派」の反発が吹き出し、馬総統も抗しきれなくなったと読み解くべきです。

金をこころよく思っていなかった国民党のベテラン議員たちのコメントが「ざまあみろ」という気分を表しています。

「金が党内同志の内部対立まで表ざたにして公開の場で処理しようとしたのは、火に油を注ぐような手法だった」

「調整役のはずの秘書長が党内で対立を自ら作り出しては、国民党は団結を弱めてしまう」

後任は総統府秘書長で党の地方派閥に顔が利く保守派政治家の廖了以になりました。金と候補者選定方針などで対立していた国民党の地方派閥の大物、王金平・立法院長は「何より人の和が大事だ。金は中央出身。(後任の)廖は地方出身で、地方の選挙を経験し、地方の事情に詳しく、秘書長として人の和を作るのに長けている」と語りました。一種の勝利宣言です。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。