息を吹き返したマカオの隆盛

執筆者:竹田いさみ2011年1月26日

 旧暦のお正月「春節」を祝う中華圏の人々にとって、2011年の元旦は2月3日だ。昨年、10.3%の実質経済成長率を記録し、「世界第2位の経済大国」になった中国。一家団欒で春節を迎える慣わしにも、労働者層と富裕層では雲泥の差がある。
 上海や広州などの都市部で働く出稼ぎ労働者たちは、小遣いを切り詰めて貯金したなけなしの給料と土産を懐に、内陸の故郷へ向かう長距離列車に飛び乗る。かたや富裕層はといえば、家族を引き連れて海外旅行に繰り出し、ブランド品を買い漁るのが当たり前となっている。また人民元の分厚い札束を握りしめた中国人が、引きも切らずカジノへ詰めかける。
 こうした富裕層の中国人を上得意にしているのが、マカオやシンガポールのカジノだ。アジアの老舗は何と言ってもマカオである。旧ポルトガル植民地時代に「賭博場」としてのカジノが興り、実業家スタンレー・ホーの一族でカジノを独占してきたことはつとに有名だ。皮肉にもマカオが一党独裁の中国へ返還されたことで一族の独占体制が崩れ、米国ラスベガス系のサンズ、ウィン、ヴェネチアンなど巨大カジノ企業が相次いで参入し、いまやマカオにはカジノが30カ所以上もある。カジノはもはや古臭い賭博のイメージをかなぐり捨て、近代的な巨大エンターテインメント産業へと脱皮している。「東洋のラスベガス」を目指すシンガポールの猛追を振り切るため、マカオはエンターテインメント産業としてのカジノ振興にその命運を賭けている。

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