中東強権体制の崩壊と中南米の強権体制

執筆者:遅野井茂雄2011年2月14日

 チュニジア、エジプトと続いた中東北アフリカでの民主化の流れは、1970年代から80年代にかけて起きた世界大の「民主化の第3の波」(S.ハンチントン)を免れた地域を襲う「第4の波」というべきであろう。「第3の波」が雪ダルマ式に広がったのと同じように、中東イスラム圏を中心に政治的な地殻変動をもたらす可能性が高い。またそれは情報革命の浸透を背景に、強権的支配のもとでの市場経済体制を打ち砕く可能性を秘めた激動への幕開けとなる可能性をも秘めている。経済大国に躍進する中国を中心に近年「北京コンセンサス」と呼ばれ影響力を拡大してきた体制への警鐘といってもよい。

 一方、中南米は、中東で起きている民主化をすでに30年前に卒業している。イベリア半島(ポルトガル、スペイン)に始まりカトリック文化圏を席巻した「第3の波」に直撃され、1980年代、キューバを除く全ての国が軍政や独裁体制から次々とドミノ式に民主体制へと転換した。債務危機の収拾を背景にした強いアメリカの指導性の下で、1990年代には代表民主主義と自由市場経済を両輪とする「ワシントンコンセンサス」を受容、先進国型の政治と経済の枠組みを確立してきた。代表民主主義を地域全体で防衛しようとする米州民主憲章を米州機構の下に構築してきた地域である。

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