さて、最後の回です。

その日本人エンジニアから機内で聞いた話では、本命に決めた企業を訪問したとき、同じようにヘッドハントされてきた3人と一緒になったそうです。1人は韓国人。車内装の専門家でした。1人は日本人。ドアの専門家でした。もう1人も日本人で、電装関係の専門家だったそうです。それぞれ、日韓のメーカーで長く働いた人々で、4人の専門家によって、この中国の自動車メーカーは3年以内に、小型車で中国トップクラスのモデルを発表したい、という目標を立てたそうです。

中国企業もなかなかやるな、という感じです。

彼らの待遇は、母国での待遇とそう変わるものではないそうです。しかし、エンジニアは実力を発揮できることがいちばん幸福なものです。例えば日本企業でつまらない事務仕事を回され、人生最後の貴重な労働のチャンスを無駄にするより、慣れない世界でもめいっぱい働ける環境があれば、飛び込んでいきたいと思うのが人間というものでしょう。

彼が企業のオフィスで見せられた設計図は、「まだまだだな」と感じさせるものだったようで、「私でもいろいろやれることがありそうだ」と期待感を高めていました。

中国などで日本の技術が流出する、という問題が心配されています。最先端の技術、国力を左右するような技術についてはまさに流出阻止に全力を挙げるべきだと思います。

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