リビア空爆とオバマ政権の揺らぎ

執筆者:渡部恒雄2011年3月25日

 3月17日、国連安全保障理事会は、リビア上空に飛行禁止区域を設定する追加制裁決議を採択した。常任理事国のロシアと中国は軍事行動に反対していたが拒否権を行使せずに棄権した。19日には米国、英国、フランスなどの多国籍軍が、カダフィー政権軍の部隊と施設に、戦闘機と巡航ミサイルによる空爆を行なった。この空爆の軍事的な目的は、反政府軍に空爆を加えているカダフィー政権軍の航空能力を奪うことで、飛行禁止区域を設定することであった。

 戦術的な軍事的目的は容易に理解できるとして、問題は多国籍軍の戦略的な目標である。カダフィー政権の反政府勢力への軍事行動をけん制するといっても、事態の展開次第では陸上兵力を送り、リビアの内戦に介入するという最悪の状況にまでエスカレートするリスクが存在する。

 今回の軍事行動について距離をおいたのは中露だけではない。NATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツとトルコも反対したため、今回の空爆をNATOとしての行動にはできなかった。アラブ連盟は3月12日、飛行禁止区域の設定を国連安保理に求め、欧米の軍事介入を支持していたが、20日、エジプトにおけるポスト・ムバラク大統領の1人でもあるムーサ・アラブ事務局長は、後に批判のトーンを弱めたものの、当初は今回の米英仏の空爆は、我々の求めていた飛行禁止区域の設定とは異なるという批判をしていた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。