「踏み絵」となるエタノール補助金政策

執筆者:足立正彦2011年3月28日

 アイオワでの勝利を目指すのか、それとも茶会党支援勢力との関係を重視するのか――。共和党大統領候補指名獲得を目指す有力者にとって、エタノール補助金政策に対しどのような立場を示すかは、その後の戦いの帰趨にも重大な影響を及ぼす「踏み絵」になると考えられる。

 2012年共和党大統領候補選出プロセスの幕開けとなる党員集会は、全米各州に先駆けてアイオワ州で来年2月6日に実施されることが既に決定している。中西部に位置するアイオワ州はトウモロコシの主要生産州であり、また、トウモロコシ産エタノールに対する補助金政策は、同州の農業従事者をはじめとする有権者の間で強固な支持がある。トム・ヴィルザック農務長官は前アイオワ州知事であり、オバマ政権としても引き続きエタノール補助金政策を支持する姿勢を明確にしている。

 共和党大統領候補の指名獲得を目指す有力者が、アイオワ州党員集会での選挙キャンペーンで歳出削減の一環としてエタノール補助金政策の廃止を訴えた場合、党員集会で勝利を収めることは相当困難となるため、非常に大きなジレンマとなっている。2000年にジョージ・W.ブッシュ・テキサス州知事(当時)と共和党大統領候補の指名獲得を争ったジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は、当時、エタノール補助金政策を廃止すべきと訴えていた。8年後に再び挑んだ2008年共和党大統領候補指名獲得争いではマケインは、エタノール補助金政策を支持する立場に変更したが、過去に補助金廃止に言及していたためにアイオワ州党員集会で勝利できる見込みが少なかった。そのため、マケインはアイオワ党員集会の次の主戦場であったニューハンプシャー州予備選挙を重視した選挙キャンペーン戦略を展開したのであった。

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