震災支援の裏でなされた外交的駆け引き

執筆者:西川恵2011年4月17日

 東日本大震災に世界各国から物心両面で温かい支援が寄せられている。その善意や真摯さに疑いはないが、支援に馳せ参じる国同士、日本に対する影響力強化をにらんで外交上の対抗心や思惑が複雑に絡む。また日本も表明される連帯の本気度を探る。震災から1カ月余、日本を舞台にさまざまな外交的な駆け引きが演じられている。
 震災後、最も早く日本に駆けつけた閣僚レベルの要人は欧州連合(EU)で国際協力、人道援助、危機対応を担当するゲオルギエワ欧州委員(ブルガリア)。3月25日来日し、日本赤十字の幹部や松本龍・防災担当大臣らと会談。翌26日には茨城県の被災地や避難所を視察し、避難者やボランティアの人々と言葉を交わし、ブリュッセルから届いた物資を配布した。

政治パフォーマンスで来日したサルコジ

これまでは訪日を先送りしてきたが(サルコジ大統領=左=と菅首相)(c)時事
これまでは訪日を先送りしてきたが(サルコジ大統領=左=と菅首相)(c)時事

「同委員は多忙の日本政府に迷惑をかけないよう、静かに来て、静かに帰った」(外務省高官)のに対し、鳴り物入りで来日したのがフランスのサルコジ大統領だ。同31日、中国訪問からの帰途、日本に3 時間立ち寄り、菅直人首相と会談。共同記者会見で「日本との連帯」を繰り返した。  同大統領はこれまで日本に関心は薄く、日本政府の訪日要請を先延ばししてきた。しかし震災で日本に国際社会の関心が集まるや、「短時間でも立ち寄りたい」と重ねて求めてきた。最初、日本側は気乗り薄だったが、同国がG8、G20の議長国であることから最終的に受け入れた。大統領は本国で人気が低迷しており、仏紙は来年の大統領選挙をにらんでのパフォーマンスと指摘する。  4月2日にはドイツのウェスターウェレ副首相兼外相が来日。松本剛明外相と会談し、福島第一原発事故などで連帯と支援を表明した。独外相が党首を務める自由民主党(FDP)は、3月下旬のバーデン・ビュルテンベルク州の州議会選挙などで大敗した。福島第一原発の事故で原発政策が争点化したのが敗因と見られ、内心複雑な訪日ではなかったか。離日直後、FDP党首辞任を表明した。

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