愚民政策を覆い隠す「東電救済機構」

執筆者:吉野源太郎2011年5月12日

 震災からの本格的な復興事業がなかなか始まらないと言われる。阪神大震災が起きた16年前、日銀神戸支店長だった遠藤勝裕氏は、このときの復興も時間がかかりすぎたと言う(「毎日新聞」5月1日付)。しかし、それでも今回よりははるかにペースが速かったらしい。当時、内閣官房副長官として復興作業を指揮した石原信雄氏によると、「阪神大震災2週間後には震災担当大臣が現地に派遣され、必要な緊急立法や規制緩和などが出そろうのも速かった」。

地盤沈下で海面より低くなった石巻港(筆者撮影)
地盤沈下で海面より低くなった石巻港(筆者撮影)

 今回は被災規模がけたはずれだということもあるが、問題はほかにもある。  石巻商工会議所の浅野亨会頭は憤る。 「なにしろ政府の仕事には上から下までスピード感も緊張感もまるでない。何を言っても答えは『検討中』ばかり。この間も菅直人首相がここにやってきたけど、地元の要望にはほとんど反応がない。津波でずたずたになったこちらは必死なのに、つまらなそうな顔して20分で帰って行ったよ。何しに来たんだろう」。  石巻市は仙台市に次ぐ宮城県経済の中心都市。農業、漁業、水産加工業、部品製造業など産業の基盤は幅広い。遅々として進まないインフラ復旧に、地元は次第に焦燥感を強めている。「港湾修復などはすぐにやる必要がある。皆がやる気になっている今が勝負。鉄は熱いうちに打たないと。今すぐ地元に5000億円くれたら、たちまち立て直してみせますよ」。  東北の基幹都市である石巻市のインフラ整備は、マクロ経済的には他の被災地域に比べ大きな乗数効果が想定される。例えば石巻港の整備が進めば、周辺の中小都市の産業復興の助けになるはずだと、浅野会頭は自負する。しかし、国がこんな調子では、その効果も次第になくなってしまうかもしれない。

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