「ウィキリークス」中南米での波紋(その2)

執筆者:遅野井茂雄2011年5月17日

 告発サイトでの米外交の機密情報の流出の波紋が広がっている。1月18日付本欄でも報告したように、暴露された情報は、概ねそうではないかとみられてきた事象を裏づける内容にとどまり、驚きは少ないが、当該国の対米関係や国内政治に及ぼすインパクトは決して小さくない。

 4月5日、エクアドルのコレア大統領は、ホジス米大使を「ペルソナノングラタ」とし追放した。大統領が汚職を承知の上で警察長官を任命した旨の公電が暴露されたのを受けての処分であった。反米のベネズエラ、ボリビアがとうに米大使を追放し、米大使不在が続くなかで、同じ急進派政権のエクアドルは、アンデス特恵貿易の恩恵享受などアメリカとの関係を維持してきた。だが対抗措置として米国政府も駐米エクアドル大使を追放し、エクアドルは米市場への特恵のアクセスを失うことになった。

 メキシコでも3月、麻薬戦争におけるメキシコ当局の非効率や内部の調整不足などを批判する公電が暴露され、パスクアル米大使が辞任を迫られた。カルデロン大統領の内政干渉は許さないとの態度に対し、メキシコとの二国間関係に影響を及ぼさないようにとの配慮からの辞任であった。

 逆に、駐米大使が辞任したのはパナマである。2009年のパナマ運河拡張計画にともなう入札で、米ベクテル社、三菱商事などからなる日米連合体が敗れ、最安値をつけたスペインの建設大手サシルやパナマの企業連合体に落札された件で、昨年12月、パナマ運河庁とアレマン駐米大使が絡む汚職疑惑を指摘する米大使館の公電が暴露されたのを受けての辞任であった。

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