オバマ政権の中東政策の転換と南米諸国

執筆者:遅野井茂雄2011年5月23日

 19日のオバマ米大統領による中東政策の発表は中南米諸国との関係にも影響を及ぼす可能性が大きい。ブッシュ前政権下で失われた影響力の回復に向けたオバマ政権の対中南米関与政策が、米政府の関心が中東に向かうことで弱まるのではないかとの観測もある。【リンク】はたしてそうであろうか。

 オバマ政権の中東和平政策の注目点は、将来のパレスチナ国家との国境線を1967年の第3次中東戦争前の境界線を基礎にするという考えを打ち出したことだ。これまで同年の安保理決議に背いて占領地を拡大するイスラエルの側についてきた米国が、中東での民主化運動とビンラディン殺害を受け、原点に立ち戻ることで中東和平に新たに関与しようとする政策転換の意義は大きい。

 「67年以前の国境ライン」は、南米諸国連合(UNASUR)加盟各国が昨年末から年初にかけて次々とパレスチナ国家を承認し、2月ペルーで開催が予定された第3回南米・アラブ首脳会議(ASPA)でアラブ連盟諸国と中東和平の打開に向けて取ろうとしたイニシアティブと一致する(2月21日付本欄参照)。飛行禁止区域の設定に係る国連決議に基づくリビアへの武力行使は、反米のベネズエラだけでなく同決議に棄権したブラジルも批判的であったが、米政府の中東政策の転換は南米諸国にとって歓迎すべきものだ。

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