電力不足が促す「電力供給の構造転換」

執筆者:新田賢吾2011年5月30日

 東京電力福島第一原子力発電所事故は1号機に続き、2、3号機でも炉心溶融(メルトダウン)が起きていたことが判明した。危機は原子炉さながらに底なしの状態に陥っているといってよい。
 福島第一原発以外の原発をめぐる状況も大きく変化しつつある。定期点検中の原発の再稼働が立地地域の住民、地元自治体の懸念でなかなか進まない中で、菅直人首相が稼働していた中部電力浜岡原発4、5号機の停止を要請したからだ。中部電力はこれを受け入れ5月15日までに原子炉は冷温停止したが、これによって原発の立地地域の住民の不安、国の原子力政策に対する不信はさらに拡大した。全国で54基ある原発のうち35基が停止しているが、そのうち何基が夏までに復帰できるかは見通しが立たない。原発は日本の発電電力量の約3割を担う主力電源だけに日本全国に電力供給の不安が広がっている。
 電力供給の最大の特徴は、電気を貯めることが出来ないことにある。需要に合わせて「同時同量」で発電しなければならないため、発電設備は需要ピークに合わせてつくられている。このピーク時の需要を抑制し、供給力を上積みすることが電力不足対応策の基本となるが、それは4つの分野に分かれる。「節電」「ピークシフト」「発電増強」「分散型電源」だ。

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