抱腹絶倒「TPP反対本」のお粗末

執筆者:山下一仁2011年6月21日
今年2月、TPPへの参加反対を訴え東京・霞が関の官庁街をデモ行進する全国のJAグループの青年部員ら (C)時事
今年2月、TPPへの参加反対を訴え東京・霞が関の官庁街をデモ行進する全国のJAグループの青年部員ら (C)時事

 政権浮揚を賭けたという動機はともかく、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加することで日本経済を復興しようとしたことは、菅政権の数少ない正しい選択だった。しかし、日本人は奇をてらった本を読むのが好きなようだ。世の中はTPP反対本花盛りである。  最初に、農業についてTPP反対本を出したのは、農文協という農業関係の出版社である。農文協は続いて、農業だけではなく、経済一般、医療、労働、環境などの分野についても、TPPで日本は滅亡するかのような本を出版した。御丁寧に、私の著書『農協の大罪』を批判した「『農協の大罪』の大罪」なる小論文を農協学者に書かせている。その後、『TPP亡国論』(中野剛志著)、『国家の存亡』(関岡英之著)、『間違いだらけのTPP―日本は食い物にされる』(東谷暁著)、『TPPが日本を壊す』(廣宮孝信著)、『恐るべきTPPの正体―アメリカの陰謀を暴く』(浜田和幸著)などが、様々な出版社から出されるに至った。TPP反対本のオンパレードである。  しかし、これらの本には『間違いだらけのTPP反対本』という本が書けそうなくらい誤りが多い。特に、農業関係の記述については、1ページに1つほどの大きな間違いを指摘できる。彼らは、農業だけでなく、通商政策についても、ズブの素人である。そのような人たちがにわか仕込みの生半可な知識を元にして、いとも簡単に本を書き、専門知識のない国民を欺いている。彼らに通じるのは、アメリカに騙されてはならないという主張であるが、日本国民を騙しているのは彼らだ。本稿では、総論的な事柄について、TPP批判本の重大な誤りを指摘したい。

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