菅直人首相の抵抗によって、通常国会の会期は今年8月末まで70日間延長された。「反小沢戦線」のかつての盟友である仙谷由人官房副長官や腹心だったはずの岡田克也民主党幹事長、さらには菅内閣の閣僚たちまでが菅首相の早期退陣を求めていたが、それを振り払って自らの続投に執着した菅首相は、最近何代か続いた軟弱な日本の首相のイメージを払拭するような驚嘆すべき強心臓の持ち主であると評価していいだろう。ただし、それが日本にとって良いか悪いかは別としての話だが……。

民主党執行部内の亀裂

国会の70日間会期延長が議決され、笑顔で衆院本会議場を後にする菅直人首相 (C)時事
国会の70日間会期延長が議決され、笑顔で衆院本会議場を後にする菅直人首相 (C)時事

 通常国会の会期延長と菅首相の退陣時期をめぐる今回の騒動は与野党間の不信感をさらに増幅したが、それ以上に民主党執行部内に大きな亀裂を生んだ。とりわけ続投を図る菅首相と早期退陣を求める岡田氏らの関係は修復不可能になったと言っていい。  会期延長が決まった6月22日の衆院本会議の前にこんな出来事があった。自民党の石原伸晃幹事長と公明党の井上義久幹事長が野党として会期70日延長案に反対することで足並みをそろえるべく国会内で打ち合わせをしていた。その途中、石原氏の携帯電話が鳴った。  相手は岡田氏だった。本会議の前に礼儀として70日延長案を野党側に伝えようとして、与野党幹事長会談の開催を求めてきたのだった。石原氏と岡田氏の電話が終わった後、横で聞いていた井上氏がこんなふうにつぶやいた。 「岡田さんの慰労会をしてやらなくてはいけないな」  石原氏は深くうなずいた。石原、井上両氏にとって、岡田氏は敵ではあるが、多少のシンパシーも感じていた。というのも、岡田氏が野党の主張に配慮してくれていたからだ。  民主党内で100-120日という会期大幅延長論が飛び出す中で、自民党は少しでも菅首相の退陣時期を早めるために延長幅の短縮を狙っていた。長期の延長によって国会での重要法案、とりわけ震災復興にかかわる法案が審議の途上にあると、その法律をうっちゃってまで菅首相の退陣を求めるという理屈が通りにくいからだ。  岡田氏はこの自民党の主張に沿う形で、延長幅を50日間に短縮するという案をもって、菅首相の説得を試みてくれた。結局、50日案は菅首相に一蹴されてしまうことになるが、その岡田氏の努力に対して、野党などは一定の評価をしていた。

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