「地方の公共事業」は米企業に毟り取られる?

執筆者:山下一仁2011年7月5日

 今回の内閣人事で菅直人首相が浜田和幸自民党参議院議員を一本釣りし、復興担当の政務官に任命した。これには驚いた。浜田議員は『恐るべきTPPの正体―アメリカの陰謀を暴く』という本を出版し、TPP(環太平洋経済連携協定)批判の最先端に立っていた人物だからだ。大震災前は、TPPこそ日本を開国し、発展させる途だと政治の最重要課題に掲げていた首相が、それに真っ向から異を唱える野党の議員を内閣に入れたのだ。菅首相が浜田議員の起用を明らかにした6月26日の前日、浜田議員は自身のブログで「農業と輸出工業産業のせめぎ合いばかりが注目されているが、TPPには『医療、金融、法律、放送、建設、教育』など、極めて広範囲にわたり、日本をとことん大改造しようとする毒矢が仕込まれている。そのことに菅政権も主要メディアもまったく目を向けようとしていない」と批判している。
 政権の重要課題について菅首相と浜田議員は意見が違う。また、野党自民党との関係をこじらせて国会で重要法案や予算案の可決が困難になりかねない。それらを埋め合わせて余りあるほど、浜田議員は政権や日本国、特に震災復興に欠かせないほどの有為な人物であり、しかも民主党内にはそのような力量を持った人材が払底しているのだろうか。
 それだけではない。浜田議員の著書の副題にあるように、TPPはアメリカの陰謀だという反米論を展開している。このような人物を起用することで、日米関係は悪化しないのだろうか。

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